ものづくり

“善く眠る”ためのものづくり

私たち、お布団に携わる者が一番困るご希望があります。
「これさえあれば、誰でも気持ちよく寝れるお布団がほしいなぁ。」
このご希望を叶えるため、数百年もの間、色んな職人が挑みましたが未だに誰も作ること出来ていません。

しかし、このご希望の答えに近づくことはできます。そのためには睡眠がどうやって取れていないのか。何が身体にあっていて/あっていないのか。これらを一つ一つお伺いして、体質に応じて原因を推定し、その改善策としてお身体に優しい寝具をご提案しています。

「お客様の作ってほしい物を作るのではなく、お客様に売りたい物を作るのではなく、お客様のお身体にあったものをお作りする」日本全国のお布団に携わる者、ひとりひとりが必ず考えていることです。

赤ちゃんの布団・高齢者の布団

睡眠を取ると体力は回復します。しかし、同時に睡眠をとるためには眠るための体力が必要です。赤ちゃんやお年寄りの睡眠が、青壮年に比べ不安定になるのは、体内時計の狂いと眠る体力が足りていないことがあります。眠ることは本来疲れをとるためなのですが、うまく寝れないことで体力が回復できず、より疲労を感じてしまうことになります。

かつて日本の津々浦々では、毎年自分たちのお布団を家庭で自作していました。お布団屋さんから木綿わたや生地を買い、お母さんやおばあちゃんが家族の身長や体格に応じたサイズのお布団をこしらえていたのです。現在はお布団屋さんから製品を買うため、このような光景は見なくなり、工業化も相まって、個々の身体を考慮しない画一的なお布団が広まってしましました。

昨今、しっかり睡眠をとることが重要なことは広まってきました。しかし、実際にお布団を選ぶときは何を考えて選ばれますか?1日の3分の1や4分の1を、嬉しく楽しく過ごせるものを選べていますか?赤ちゃんもお年寄りも元気な方も、せっかくの身体のためのお買い物ならば、しっかり考えてみる良い機会ではないでしょうか。

お布団を売ること・作ること

日本には多くの”お布団屋さん”があります。お布団屋さんには2種類あり、お布団を売るお店・作るお店があります。お布団を売るお店や売場は多く見かけますが、お布団を作るお店を見ることは稀でしょう。

現在、お布団を作っているお店や工場は日本国内で数百件程度。このうち多くが木綿やポリエステル綿のお布団、もしくはケットの縫製などを行う工場です。平成の30年間で多くのお布団を作る現場は減り、多くを海外に頼るようになりました。

本来お布団はなるべくお客様の現状や体質を聞きながら作っていくものです。売場で出来合いの製品を、プロの説明なしにサイズと価格を頼りにお客様が選ばざるをえない。お客様(消費者)にとって正解を見つけることが段々難しい世の中になってきています。

私たちの工場ができること

私たちの仕事場でのものづくりでは、得意なお布団・苦手なお布団があります。

得意なことは、お客様のご要望や現状・体質に応じ、一つ一つ手作業を中心にお布団を作り上げていくこと。苦手なことは、同じものを数多く大量に生産すること。そのため、よく売場で見かける羽毛布団や化学繊維のお布団・マットレスは作ることができません。

その分、絹(シルク)・麻(ラミー・リネン)・木綿(コットン)の「天然繊維」では、日本で一番のお布団を作ろうと頑張っています。1921年の創業以来、お布団屋さんのためのお布団屋として、数万枚ものお布団を作ってきました。もしかしたら、もう既に百貨店さんや地元のお布団屋さんでお客様のお目にかかっているかもしれません。私たちは、お客様のお身体に合いそうなどんなお布団でも作ります。

お布団ができるまで

お布団は主に「側地」と「中わた」の2つの材料でできています。

まず「側地」は、絹(シルク)や木綿(コットン)等の巾の広い生地を裁ち、ミシンで縫い合わせます。大きさは赤ちゃん用で115×135㎝程度、大人用では230×210㎝程度まで大きいサイズのものがあります。表裏が同じ生地や機能やデザインで表裏が違う素材になることもあります。「側地」の素材や等級は寝ているときの肌触りやベタつきに大きく影響します。

次いで「中わた」は、絹(シルク)や麻(ラミー)等のふわふわしたものを用います。側地より一回り大きいサイズに形を整えます。夏用は薄手で300gから、冬用は厚いもので3㎏にもなります。「中わた」の素材や等級によって、お布団の保温・保湿の機能性が大きく異なります。

最後に、「側地」に「中わた」を入れ、綴じ加工を経てお布団が出来上がります。完成したお布団は金属探知機で異物混入の確認を行い、お客様へお届けします。生地の裁断から仕上げまで、ほぼ全ての作業が職人の手によって行われます。